よくお客さんから訊かれるのがそばの量についてである。まず、機械打ちのそばになれている方にとって江戸手打ちそばの量は少なく感じるはずだ。間違いなく少ない。事実である。では何故少ないか、理由を上げる。
1 そばの分子は小麦の分子の様に網目構造をしていない。故に水がすう~と中まで浸透しやすい。
2 江戸そばは8割がそば粉。そして細さは1ミリという決まりがある。そんな細いそばであれば茹で上がるのも20~30秒である。
3 そばの中心部まで水が浸透するとのびた状態になる。それを防ぐ為に冷水で洗い幾分か浸透する速さを遅らせる。これがコシのある そばの状態である。この状態は長くはもたず1分30秒ほどが限度である。
4 上記の時間を過ぎるとそばはのびた状態になり、切れやすくもなる。
5 コシのある美味しいそばの状態で食べてもらえる量はどれ位だろうと考えた江戸のそば職人が出した答えが三箸半、80~100gという事になる。
江戸っ子にとっては江戸そばの量は昔から変わらずだから普通である。もっといえば老舗には大盛がない。これはのびてしまうからである。グルメであった江戸っ子にとってはのびたそばは喰えたもんではなかった。だからそば屋でも提供をしていない。