キッシンジャーが死んだ

アメリカの元国務長官キッシンジャーが死んだ。彼の外交政策は色々いわれる。最も印象に残っているは

力の均衡、要はバランスではないか。現在の状況を踏まえれば、ロシアのウクライナ侵攻。これは侵略だ。

ではロシアが悪いのだからプーチン政権を潰して新しい政権にしようとは考えない。ロシアの戦力を削り

隣接する国と同等の力関係にしてバランスを保つ考えではないだろうか。ロシアという国をなくしてしまえば

力のバランスが崩れ新たな勢力が出現する可能性が高い。そちらの方が厄介だという事だ。

彼のこの考えはハーバード大学の博士論文「回復された世界平和」で書かれている。30年以上前の学生時代に

読んで、現実主義的で実際の外交とはこういうものかと思い知らされたものだ。

 これに近い考えがウイルソン元アメリカ大統領だ。1918年第一次世界大戦後の会議において彼一人が敗戦国ドイツに対し

過度な懲罰ではなく融和に導きもう一度仲間に加えようとした。ドイツがなくなるとバランスが崩れるからだ。但しこの主張を

押し通す事は出来なかった。スペイン風邪に罹って寝込んでしまったのである。その結果他のヨーロッパ諸国の主張する懲罰が

決まってしまい、ドイツはとんでもない賠償金を支払うはことになる。これがナチスドイツが誕生するきっかけとなる。