前回に続き音についての話です。
そば屋で音が重要になってくるのが蕎麦打ちと天ぷらです。天ぷらって高温料理だと考えている方が
多いのですが、実は低温料理です。確かに油は180℃~200℃の温度設定ですが、水でといた小麦粉が
膜となって高温の油が直接素材に触れることがないのです。ですから徐々に素材の水分が抜けて旨味が
凝縮していく仕組みになっているのです。
素材に熱がとおったか、とおらないか見極める時に音が重要になってくるのです。素材に熱がとおると
音が軽くなるんです。音の代わり端で油から引き上げると丁度よく揚がります。これは経験をつんで体得
していくしかありません。私共で使用する天ぷら鍋でも3人前が限度です。それよりも多く材料を入れると
油音が下がり天ぷらもうまく揚がりません。また、材料が多くなると音が重なり聞きづらくなりますので
音と同時に素材から出る泡の変化で見極めます。素材が上がると泡が細かい泡から大きな泡にかわります。
それが揚げあがりのサインです。天ぷらは結構神経を使う料理です。料理屋で天ぷらがうまくない店が
結構あるんですよね。天ぷらを軽くみているところがあるんではないでしょうか。
余談ですが、私が行く飲み屋の旦那さんにきいたんですが、その旦那さんも若い時分寿司屋で修業なさっていて
その時店の親父さんから薬味を切っている音で誰が切っているか判断しろとよく言われたそうです。これって蕎麦打ちと
似ているように思いませんか。音は重要ですが、人それぞれが持っているリズムがあるんですが、その違いを解れ
という事ではないかなと私は考えます。音とリズムは料理の上でかなり重要なことですよ。
次回も音の話とかなりそばの話から脱線した話をします。