お客さんに何を伝えればいいのか。

 お客さんに何を伝えればいいのだろうか?そば屋だからそばを売ればいいのだろうという人が大半だと思う。でも俺がやりたいそば屋はそうではない。飲み屋だ。そば屋は居酒屋の原点である。主役は酒でそばは脇役、これが本来のそば屋だと俺は考えている。じゃあ、飲み屋だ、酒を呑んでと言ってもお客さんには伝わらない。ここで立ち止まってしまう。常連のお客さんが独り言の様に呟く事がある。「丁寧さが分かる」、「ここは大丈夫だよ、安心して食べられるよ。」俺が出来る限り手作りで作っている事を知っているからの言葉なのだろう。既製品を使わずに手作りにこだわるのは、祖父の代から受け継がれてきた事だ。ご新規のお客さんでウチで飲んで帰りに「美味しかった。どこで買ってくるの」と訊く方もたまにいる。もちろんプロですから、自分で作りますよと答える。びっくりしているんだよね。既製品を出していると思われているんだとショックを受けるときもある。この常連のお客さんの言葉がヒントなのかもしれない。手作りの良さをお客さんに伝える。丁寧に作られたつまみでゆっくりと酒を楽しみたいお客さんに俺も来店してもらいたい。