タバコと日本人

 当店は禁煙。以前は喫煙可であったのだが、香り、味を大切にする店なので禁煙にした。タバコの臭いは食べ物の香りを阻害する。更にタバコによって味を感知する味蕾という器官がダメになってしまう。せっかく丁寧に手作りで作ったつまみを楽しみに来店して下さるお客さんに嫌な気持ちを抱かせたくない考えもあって禁煙にした。そもそも日本人はタバコを吸う民族ではない。400年前に南蛮人によって持ち込まれた貿易品だ。日本人の舌は黒帯といってもおかしくない。それ程繊細な味覚をを備えている。それがタバコが入ってきた事によって徐々に蝕まれてきていた。そんな折、禁煙ブームが興ってタバコを吸わない方が増えてきた。このブームによって本来の日本人の味覚が戻ってきているのではないだろうか。和食は水の料理と言われる。素材本来の味を活かす為余計なものは一切排除する引き算の料理だ。西洋の料理と真逆である。日本酒も純米大吟醸になれば水に近い雑味のない純粋な味になる。これは日本人だからこそできる技である。そして新たな味覚「うま味」は日本人が発見したものだ。我々日本人はタバコを吸わない民族であるという事を再認識するべきだ。