フランス料理の狐野扶実子さんがやはり音を重要視しています。
彼女がいう音とは肉を焼く際に発生する音です。肉にストレスを与えずに焼き上げる為
絶えず焼く音に耳を注意深く傾けています。この音も長年の経験から会得した物ですから
自分で掴み取るしかないというところは、蕎麦打ちや天ぷらと共通しています。
ちなみに狐野扶実子さんはフランスの三ツ星シェフ、アラン・パッサールの弟子で、
彼の店でスーシェフ(二番手)まで上り詰めた方です。その後フランスで出張シェフ
として活躍し、シラク元大統領の夫人も贔屓にしていました。現在は日本に帰国しております。
二十世紀最高のフランス料理人ロブションは天ぷらの原理を理解しているので、彼のスペシャリテ
には天ぷらがあります。ラングスティーヌのパータフィロ包みです。
ラングスティーヌは手長エビ、パータフィロはパイ生地の薄い物です。天ぷらは高温の油が直接
素材に触れなければいいので、日本では水でといた小麦粉を使用しますが、ロブションはパータフィロで
代用しています。油もオリーブオイルでおよそ180℃で40秒程揚げて完成です。皆さんも試しにやってみると
いいですよ。うまくいくと天ぷらより美味しいです。
ここまで3回ほど料理における音について話してきましたが、音つながりでピアノの話を少しします。
今から33年前、日本に二十世紀最高のピアニスト「ホロヴィッツ」が来日しました。この演奏を聴きに行ったのですが
まあ驚きました。私が出すピアノの音と全然違います。ホロヴィッツが出す音をクリスタルとすると、私が出す音は
曇りガラスです。しかもピアノの弾き方が日本で教えられている指を曲げて弾くハイフィンガー奏法とは全く違う
指をまっすぐ伸ばしたまま弾く奏法です。後で知ったのですが、この奏法を重力奏法といいショパンの系統の方が
やる奏法だそうです。この奏法でピアノを弾くと歌うように弾けるのです。
この話の続きはまた次回します。よろしかったらまた読んで下さい。