江戸前の天ぷら

江戸前の天ぷら

江戸前の天ぷらに野菜はないです。
江戸の天ぷらは本来江戸湾すなわち東京湾でとれた魚を揚げるものでした。

近年都内の天ぷら屋で野菜の天ぷらがない店はまず見かけません。
この野菜の天ぷらを広めたのが銀座の「天ぷら近藤」です。

ここのご主人が御茶ノ水にある山の上ホテルの天ぷら屋の花板をやっているときに
大々的に野菜の天ぷらを出したのがおそらく最初だと思います。

それ以前は、江戸前の天ぷら屋で野菜の天ぷらを注文すると
「ウチは精進揚げ屋じゃねえや」とおやじさんに言われたものです。

この伝統を打ち破った近藤のご主人はすごいと思います。
ここの天ぷらは薄い衣でサッとあげるので、胃にもたれません。
この店を一躍有名にしたのが厚く切ったサツマイモの天ぷらです。
食べると天ぷらって蒸し料理だと認識できます。

ウチでもやっているのであらかじめ℡で予約して頂けるとご用意ができます。
また、近藤さんはアスパラガスの天ぷらを最初にやった方でもあります。

ここでもう2軒ご紹介したい店があります。
一軒は赤坂にある「花村」という天ぷら屋です。
ここが大阪から昭和の初めに上野に店を構えた事により都内に
お座敷天ぷらが広がりました。
いわゆる現在都内で最もある天ぷら専門店のスタイルがお座敷天ぷらです。

もう一軒が小川町にある「天兵」です。
この店は日本でただ一つ「かやの実の油」を使用する天ぷら屋です。
かやの実とは絶滅危惧種のかやの木の実からとる油で非常に軽いです。
あまりにも軽いので太香胡麻油をブレンドしてこの店では使用してます。
ここの店の先代が先ほど書いた「ウチは精進揚げ屋じゃねえや」言った
店です。

どちらも一度訪れるといいですよ。
あっ書き忘れましたが、赤坂の「花村」の先代は慶応大学の理工学部卒業で
天ぷらを科学的にとらえた最初の方です。
ここの天ぷらは天紙が油で汚れません。
その理由は先代が浸透圧を利用して油を切る事を考えついたからです。