風変りなそば屋

ウチの店は手打ちそば屋の中でも風変りです。

手打ちそば屋とうたいながら、積極的にそばを売って
いません。

酒を売っています。つまみを売っています。

しかも、流行の酒と真逆、そば屋の定番のつまみは
ほとんどない、そんな店です。

何故か。

だって人と一緒じゃつまらないでしょ。

人と違うから面白いじゃないですか。

味付けもおそらく他店と全く違います。

味が違うのは当たり前じゃないかと言われるかも
しれません。

そのぉ~、根本的な所で違うんです。

例えば、南蛮漬け。

他店は甘さが分かる程、砂糖・味醂を入れます。

ウチはほとんど入れません。

甘汁と酢だけです。

この味がいいと言ってくれるお客さんが結構います。

やはりいるんですよ。今の時代の味付けが甘すぎると
思っている方。

酒も吟醸酒・大吟醸酒はどの酒も結局同じ味。

だから米を削らない純米酒をウチは出します。
こんな酒出しているのはウチだけです。

するとこの酒を好むんですよ、ウチのお客さん。

米を削らない酒はすなわち江戸時代の酒です。

こんな酒に合うつまみは、素材の味がいきている
食材です。

そば屋の定番「板わさ」。
まじりっけのない昔ながらの材料と製法で作られた蒲鉾

「焼きのり」。
これも「アサクサ種」という海苔で作られた本物の浅草のり

今の時代これを仕入れて、つまみとして出す場合
他のそば屋のそれよりはるかに高い値段がつきます。

それでもお客さんは注文します。
ウチのお客さんはそこに価値観を置いてません。

世間一般のそば屋とは全然違うそば屋ですけど
私はそんなそば屋をやってます。